第3回 IT創薬コンテスト:「コンピュータで薬のタネを創る3」結果
第3回 IT創薬コンテスト:「コンピュータで薬のタネを創る3」 結果
平成28年10月27日にCBI学会2016年大会内フォーカストセッションにて、参加グループによる発表会と表彰式を行いました。
16グループにご参加いただき、合計3,192化合物の阻害活性測定実験を行い、良好な半数阻害濃度値(IC50)を有する3個のヒット化合物を得ることができました。グループの内訳は、産業界から3グループ、大学・国立研究所から13グループとなり、中には海外からの参加(2グループ)や、学生のみでのご参加(5グループ)もいただきました。16のグループのうち、第1回コンテストないし第2回コンテストに参加したグループは11グループにのぼり、IT創薬に関わる人材に「フィートバックされた実験結果を活かす機会を提供することでIT創薬分野の人材育成に貢献する」という本事業の目的の一つが達成されたと確信しています。
発表会および表彰式は、特定非営利活動法人 情報計算生物学会(CBI学会)の年会であるCBI学会2016年大会内で開催し、総勢70名を超す方にご参加いただきました。CBI学会2016年大会には製薬企業をはじめとする多くの企業研究者も参加しており、発表会でも製薬企業の研究者との高度な議論が交わされ、大変有意義な会になりました。
受賞情報
グランプリ(シュレーディンガー株式会社賞)
「Chicken_George」
代表者:小林大祐氏 (名古屋大学 大学院工学研究科 計算理工学専攻 修士学生)
グランプリ(日本マイクロソフト賞)
「IMSBIO」
代表者:望月正弘氏 (株式会社情報数理バイオ)
グランプリ(ナミキ商事賞)
「chuo_univ」
代表者:岩舘満雄氏 (中央大学 理工学部 生命科学科 准教授)
学生奨励賞(JBIC賞)
「Ranker」代表者:鈴木翔吾氏 (東京工業大学 大学院情報理工学研究科 計算工学専攻 修士学生)
「TSUBAMEグループ」代表者:安尾信明氏 (東京工業大学 情報理工学院 情報工学系 博士学生)
「シロツメクサと擬装理論」代表者:談莫東氏 (東京大学 大学院工学系研究科 化学生命工学専攻 博士学生)
ルール
・提案化合物数
各グループには400個の候補化合物のIDを優先順位と併せて提出して頂きました。この数は在庫切れによる欠品をカバーするために多めに設定されています。
・グループのグレード分けについて
アッセイ可能な化合物数の上限のため、応募グループが多数となった場合には、審査員の判断によってグループごとのアッセイ数を制限するとアナウンスしていました。実際にはすべてのグループの欠品を除いた上位化合物200個(3,200化合物のうち,グループ間の重複を除いた3,192化合物)がアッセイされました。
アッセイ方法
アッセイはBientaが担当し、まず化合物の添加によるSirtuin 1の熱安定性の変化の測定(Thermal shift assay, TSA)を行い、これに絞り込まれた化合物について阻害活性の測定を実施しました。以下にその流れ図と詳細を示します。
【Primary screening】
固定された濃度(化合物: 10 μM, Sirtuin 1: 300 μg/mL)でTSAを1試験実施し、条件「positive shift ≧ 0.45 Kまたはnegative shift ≧ 1.5 K」に該当する化合物を抽出しました。
【Hit confirmation】
3つの濃度(10 μM, 20 μM, 40 μM)でTSAをそれぞれ4試験実施し、化合物の作用の濃度依存性(Dose-response relationship: DRR)を確認しました。
【Counter screening】
DRRが確認できたら、Sirtuin 1とは異なる蛋白質2種(Carbonic anhydraseおよびAbl kinaseのSH2ドメイン)を用いてHit conformationと同様のTSAを実施し、化合物のSirtuin 1特異性を確認しました。特異性まで確認できた化合物をTSAヒットと定義しました。
※以上のアッセイは全てNAD+が存在しない条件下で実施されました。
【Inhibitory assay (IC50, n = 1)】
TSAヒットに対して、BPS Bioscience社のFluorogenic SIRT1アッセイキット(Catalog: 50081)によるIC50測定が0.05~100 μMの濃度範囲で実施されました。
【Inhibitory assay (IC50, n = 4)】
IC50, n = 1の測定でIC50を決定できた4化合物とDRRを確認できないが阻害活性を有する可能性のある3化合物に対して、SIRT-Glo platformのアッセイキット(Promega G6450)によるIC50測定が0.05~100 μMの濃度範囲で実施されました。
※TSAヒットを対象にしたPromegaアッセイキットによる阻害率の測定(化合物10 μM, n = 4)も実施しています。この結果に基づき、BPS Bioscience社のアッセイキットによる絞込みによって活性化合物を取りこぼした可能性は小さいと考えています。
※BientaはEnamine社のバイオロジー部門です(http://bienta.net/)。
アッセイ結果
全3,192化合物のThermal Shift Assay (TSA) でのプライマリースクリーニングによって48化合物が選ばれ、最終的に3化合物のIC50を決定できました。これらの化合物はいずれも<20 μMとなるIC50値を有しており、同じ実験条件下で決定したSirtuin 1の既知阻害剤であるニコチンアミド(Nicotinamide)のIC50 (158 μM) と比較すると、これらの化合物の阻害活性は良好であることがわかります。
表彰式の様子
問合せ先
cadd-contest@bi.cs.titech.ac.jp
特定非営利活動法人 並列生物情報処理イニシアティブ(IPAB)
IT創薬コンテスト:「コンピュータで薬のタネを創る3」運営委員会